UAEで開催されたアジアカップ2019大会で、日本は決勝でカタールに敗れ、準優勝という結果になりました。
予選~決勝までの合計7試合を通して、課題と収穫を総括し、森保監督の采配についての評価も行っていきます。
選手のパフォーマンスや試合結果とは異なり、実際に起こった事象を取り上げてまとめました!
アジアカップでの森保ジャパンの現在地を確認し、次へとつながる議論の参考になれば幸いです!
INDEX
アジアカップ2019で7試合の内容から見たサッカー日本代表の収穫
今回のアジアカップでの収穫は、以下2点があります。
- アジア諸国のエースレベルの身体能力に対応できた
- 戦えそうな選手をある程度試す事ができた
アジア諸国の身体能力に対応できた
今回のアジアカップを通して、攻守両面で『日本は身体能力の低い国』という認識を持つシーンはかなり少なかったです。
サウジアラビア戦では代表史上最速と言われるファハドに仕事をほとんどさせず、
イラン戦ではスピードとパワーを併せ持つアズムンも抑え込み、唯一身体能力でやられたのがウズベキスタン戦のショムロドフぐらいでした。
現在の日本代表センターバックは歴史上最も身体能力の高さがあると言われており、アジアではセットプレーでも脅威を与えるような強い方の国でした。
酒井・大迫・南野・遠藤はデュエルの勝率も高く、個で戦える選手が多くなったのが収穫だと思います。
戦えそうな選手をある程度試す事ができた
4年後のW杯に向けて、去年のキリン杯と合わせてある程度試す事はできたと思います。
北川は信頼を得られるプレーができなかったと思うので、しばらくFWは別の選手を探す事になるでしょう。
ロングカウンター要員として、原口・伊東も計算できました。
南野のポジションの控えはFWを選ぶのか、トップ下タイプを選ぶのか選択の幅がありそうです。
DMFとCBを兼任できる選手として、塩谷・富安はどちらも難ありな点もわかりました。(塩谷はマンマーク過ぎ&富安はビルドアップ面etc)
守備的SBとして佐々木、攻撃的SBとして室谷も明確になりました。
GKはまだまだ固定できなさそうなので、中村含めてチャンスがありそうです。
控えの選択肢が弱い部分が明確になったので、そこも収穫と言えるでしょう。
選手面が主な収穫と言えそうです。
アジアカップ2019で7試合の内容から見た森保ジャパンの課題
アジアカップを通して見えた課題は以下の7点です。
- 事前準備と相手の弱点スカウト
- 修正対応力
- 控えの引き出しのなさ
- 決め事が足りない
- 基本戦略の意識共有
- ビルドアップのレベルアップ
- 狙われる箇所の対策
それぞれ浮き彫りになった試合と詳細を解説していきます。
事前準備と相手の弱点スカウト
森保監督の準備不足が露呈したカタール戦だけでなく、ベトナム戦でも事前準備が足りずに苦戦していました。
ベトナム戦課題まとめに詳しく記載していますが、Wボランチの間や、CB間のギャップ等、試合前からわかっていた弱点に対して意図的にそこを突くという事が全く見られませんでした。
一番大事な決勝のカタール戦では5バックで来た事になぜか驚いていた森保ジャパンですが、戸田さんも岩政さんも5バックを予想されていました。
4バックか5バックかのたった2種類なので、両方の準備をしておかなかったのは怠慢としか思えません。
日本が攻めながら苦戦した相手のほとんどが5バックのチームでした。
トーナメントが始まる前から、格下が多いアジアカップでは5バックを使ってくる試合が多くなる事が容易に想定できたにも関わらず明確な5バック対策の準備をできていなかったのも疑問が残ります。
唯一イラン戦ではアンカー脇が弱点で、きちんとそこを突けていましたが、そもそも日本の得意な形で、フォーメーション相性が良くて、森保さんが何か準備しなくてもできたのではないかと思います。(日本勝利の最大の要因は、イランが戦略を間違えたとも言われています。)
W杯ではアジアカップのような同等か格下からきちんと勝ち点を獲得して予選を突破し、決勝トーナメントでは、格上相手に弱点を突く事を徹底しなければまず勝つ事はできません。
森保監督の準備不足がアジアカップの敗因で、最大の課題と言えます!
修正対応力
カタール戦で露呈していたとおり、準備不足に加えて相手とのフォーメーションのかみ合わせへの修正ができたのが、2失点した後の前半35分すぎでした。
これからW杯で自分たちより強いチームを相手にする事を想定すると、失点して試合も半分終わった後から対等に戦えるようになるようでは時すでに遅しです。
トルクメニスタン戦でも前半を捨ててしまい、後半から原口と長友の位置関係を修正し、相手サイドバックへの2対1を作り出せるようになりました。
試合中での修正はなかなかできず、ハーフタイムをはさむ必要があるというのが西野ジャパン時代から続いています。
修正内容が選手1人1人に説明を要する長い文章になってしまうのは、あらかじめ決まっている似たような戦術を持っていない事にも起因します。
そういった修正の速さを作り出す為に、普段の練習時から4バック・Wボランチ・1トップ以外のフォーメ―ションを持つべきだと私は思っています。
控えの引き出しのなさ
今回のアジアカップを通して目についたのが選手交代の遅さです。
しかし、遅いだけでなく1パターンな点も気になりました。
ベンチ内では乾・塩谷・武藤・伊東しか戦力になると思っていないように感じました。
控え選手への信頼のなさが交代の遅さとパターン化につながったと思います。
北川にあれだけプレー時間を与えて何もできなかったというのもあると思いますが、控えの信頼されてなさは西野ジャパンの時にも痛感しました。
西野ジャパンでは、大島・岡崎が起用できる状態じゃなく、宇佐美・山口も代表のレベルにない点で、スタメン以外がとても使いにくい状態でした。
W杯のベルギー戦では81分に2-2の状況で、柴崎→山口/原口→本田という交代を行ったのみです。
3枚交代もしなかったし、タイミング的にも点を取るつもりなら山口ではないでしょう。
仮に岡崎・中島・堂安・遠藤が起用できる状態だった場合、山口が出てくる事もなかったでしょうし、攻撃的交代策をとることができたでしょう。
ベルギー戦の敗因は控えの薄さが顕著になった試合だと思うので、次のW杯ではベンチメンバーに期待感のある交代策を持って臨んで欲しいです。
決め事が足りない
ベトナム戦課題まとめで記載させて頂いたように、クリアボールの選手配置と蹴る場所が決まっていませんでした。
他にもウズベキスタン戦失点時のスローインの守備配置も、BチームとAチームで守備配置が異なるのも決まり事がない、選手判断で行われているので、チーム全員に統一した決め事をすべきでした。
SBとSHの関係等も選手判断で決まる為、出場する選手によって異なるので、周りは見てから判断する必要があり、判断に時間がかかっているシーンも多く見られました。
代表チームは本来一緒にプレーする時間が少ないので、今回のように事前合宿~アジアカップ期間中ずっと一緒にいるので、試合を経るごとに熟成されていくようにすべきでした。
しかし、森保ジャパンはトーナメントを通してずっと決まり事のない選手判断で進んでいくまとまりのないチームでした。
優勝を逃すという結果もですが、たまたまハマって勝手に相手が自滅したイラン戦以外の全ての試合が良くない内容になってしまい、過程も結果も良くない大会となってしまいました。
基本戦略の意識共有
日本代表メンバーはアドリブでプレーし続けたので、個々の質で勝っている格下相手にうまくいかないという試合が非常に多かったです。
以下の基本戦略はある程度チーム内で共有して臨むべきでした。
- 5バックの崩し方
- 3バックでのビルドアップ封じ
- フォーメーション特徴の理解
- 攻撃的ロングボールを蹴るルール
- 守備的ロングボールを蹴るルール
- ビルドアップ時のプレッシングの越え方
- 相手の弱点の突き方
- SBの縦スライド
スペインの強さはこういった基本戦略を子供の時から学んでいる事にあると坪井健太郎さんの書籍にありました。
私も基本戦略を学び、もっと世に広める活動を行っていこうと思います。
ビルドアップのレベルアップ
CBの1stラインの越え方さえうまくなれば、日本の攻撃はかなり上達できると思います、
富安・吉田のもしかすると日本代表史上最強のCBコンビに対して、攻撃面の伸びしろはまだかなりあると感じています。
個人的に富安には、フリーで1stラインを超えて2ndラインの1枚を引き付けるまでを要求されるCBのビルドアップをするチームに移籍して欲しいなと思っています。
狙われる箇所の対策
日本の弱点として、最もわかりやすいのが酒井の裏・柴崎の対人・長友の身長です。
相手SHが手前に引く事で酒井を引っ張りだして、その裏にIHが走り込むと、柴崎がついていく事になります。
柴崎はついていく事はしてくれますが、対人が強いわけではありません。
相手からするとサイドの攻防が、最強レベルの酒井が最弱レベルの柴崎に代わり、そこから最も低い長友へのクロスが効果的です。
ベルギー戦でも長友サイドにフェライニを置くという恐ろしいミスマッチを作られましたので、そこへの対策をどうするかはこれからも取り組んでいかなければなりません。
サウジアラビア戦・イラン戦では酒井裏で柴崎に対応させられるシーンがありました。
対策としてぱっと思いつくだけでも佐々木を育てる事や、柴崎と遠藤を入れ替える事、酒井を前に出さない事等考えられます。(吉田を左に使うのもその一つです)
W杯までに何も準備しないという事だけは避けなければいけません。
まとめ
今回のアジアカップは頭の良い子がテスト勉強をせずに来て、不合格になったようなそんな印象でした。
選手を責めるのではなく、監督スタッフ陣がちゃんとやれよと良いたくなるような要素が多すぎました。
選手はとても頑張っていたと思いますので、収穫は選手の頑張り面、課題はチーム森保スタッフのマネージメント面とあげさせて頂きました。
今後は別の記事で、基本戦略についても取り上げていきますので、そういった事を知った上で観戦し、チーム森保スタッフの評価の参考になればと思っています。
監督への評価の質を少しでも向上させて、組織(日本のサポーター)をレベルアップにつながる手助けとなる事が日本サッカーを強くさせる事につながると信じて情報を発信していきます。
ここまでマニアックな内容を読んで頂きありがとうございました!
次の代表戦でもサッカーを学び、日本が強くなる一歩を皆さんで進んでいきましょう!