アジアカップグループリーグ第2戦のオマーン戦が先日行われましたね。
結果は1-0の日本勝利ですが、日本はPKの1得点だけという事で、「不安が残る」や、「大迫不在の影響」等と書かれている論調が散見されます。
実際どうだったのかを今回も分析コメントを出している有識者のコメントと2回試合を見て私なりに考えていきたいと思います。
INDEX
課題と試合中に起こっていた現象
今回は戸田さんの裏解説(戸田さんと岩瀬さん)と、スカサカライブ、Leo the footballさんの分析コメントを見つつ、試合を見返して検証していきます。
オマーンの守備について
オマーンの両SHのサレフ・アルヤハマディが酒井・長友のオーバーラップについていかない事で、序盤の日本のチャンスにつながった。→☆1
後半からオマーンの前線2人が2CBにプレスにいくようになった。
オマーンの攻撃について
前半23アルサーエディが右SB落ちして、3-4-3へ移行を狙っていたけど、その変形をする前にプレスされて困っていた。→☆3
両CBが開き、ボランチも下りず、2バックのまま前にターゲット置いてロングボールを蹴る形をとっていた。→☆4
日本の守備について
Wボランチが2人ともいないという状況がトルクメニスタン戦に比べて減った。中を閉める意識も高くなった→☆5
北川・南野の2枚でのプレッシングでビルドアップを封じていた→☆6
両CBの鎖が切れてしまっている場面がいくつか見られた→☆7
日本の攻撃について
長友・原口のポジショニングが前回同様の位置関係になってしまっていた→☆8
堂安の最も活きる形が得点シーンで見られた→☆9
相手の1stディフェンスラインを超える為の3バック、超えてからどうするか等の意図がなかった→☆10
その他采配について
交代枠の使用回数が少なく、サブ組とスタメン組にメンタルが分かれてしまうリスクを感じた。
日本対オマーンの最高画質ハイライト動画!
日本とオマーンの攻守のフォーメーションについて
お互いのフォーメーションは以下の形でした。
- 日本(攻)→オマーン(守)
- 日本(守)←オマーン(攻)
日本はいつも通りの攻撃時4-2-3-1,守備時4-4-2で、オマーンは攻撃時に3-4-3,守備時に4-4-2でした。
オマーンは23アルサーエディが右サイドバック落ちし、20アルヤハヤエイがトップ下に、両SBが高い位置を取って3トップに変形するような形になっていました。
有識者コメントの分析・感想とビジュアル解説
✩1オマーンの両SHが酒井・長友のオーバーラップについていかない
スカサカで指摘されていましたが、見返してみるとついていかないというより、途中で受け渡し(諦め)ているように見えました。
実際のシーンとして、最初のチャンスシーンの堂安の突破直前までを切り取ってみました。
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最初は酒井vs左SH、堂安vs左SBだったのに、画像5枚目では酒井の前にSHとSBがいて、堂安vs遅れ気味の左DMFとなっています。
酒井・柴崎・堂安で、前にボールを運ぶ事に成功してチャンスにつなげていますね!
後半になるとオマーンの両SH達は指示されたのか、もっとついて来るようになります。
※もしかしたら、後半は酒井が最初からポジションを高い位置にとった事で、SHもついてきていただけかも?最初から高い位置にいくときちんとついてきて、ボールを動かしながら走りこむとついていけないだけかもしれません。
✩2オマーンのCBコンビのラインがそろっておらずデコボコ
前半にチャンスを何度も作っていた南野の飛び出しは基本オマーンの最終ラインがそろっていない事に起因していたので、一番わかりやすかったシーンを紹介します。
この後ボールを持っている遠藤から南野にスルーパスが出てシュートまでいけるのですが、南野も北川もこの最終ラインのギャップを狙っている事がはっきりわかります。(結果ポジション被ってしまってますが。)
✩3オマーンの守→攻のフォーメーションの変形前にプレッシング
変形前にプレッシングという表現が正しいのかわかりませんでしたが、結局下の写真のように日本としてはマークを受け渡して、縦スライドして同数プレッシングできていました。
オマーンの右ボランチ23番が右SB落ちしても、右図のように原口と長友が縦スライドしてマークを受け渡しているので、23番はフリーになれず、この後ロングボールを蹴らされ、それを日本に回収されてしまいました。
✩4両CBが開き、2バックのまま前にターゲット置いてロングボールを蹴る
ビルドアップで後ろに数的優位を作るのではなく、後ろに数的同数のまま、中盤に数的優位を作り出し前線に入れたロングボールのセカンドを拾うようにする攻め方が何度か見られました。
5分の方のシーンはセカンドを拾ってそこからセンタリングまでつながっていて、1つの形として成り立っていました。
ロングボールを蹴った後はオマーンがパワーをかけて押し上げる事で、以下のように中盤での数的優位、前線での数的同数になっているので、日本としてはよくない守り方だと言えそうです。
ロングボール戦術の相手には前線の少ない人数でのプレスでロングボールを余裕を持って蹴らせないようにしつつ、中盤のプレスバックで、中盤~後方での数的優位を作れるようにポジションを取る必要がありました。
✩5Wボランチの2人の鎖、ポジショニングが改善された
富安&柴崎コンビのトルクメニスタン戦で指摘していたWボランチ二人とも前にあがってしまうという事がなくなっていました。
左写真では遠藤が前に出て行ってボールを奪い取り、1度後ろの柴崎に下げたシーンです。取り切れなかった場合にピンチになるので、柴崎がリスクを考えて後ろに下がっていました。
右の写真ではかなり引いたところでの遠藤の守備から、ボールを奪い柴崎が前に出て行ったけれども攻めきれなくて再度オマーンのカウンターになった逆カウンターの形です。
逆カウンターではWボランチの二人とも前に行ってしまっていたら最悪の形ですが、遠藤はそのまま上がらずに柴崎に前に行かせています。
このようにどちらかが上がってどちらかが守備のポジショニングをとるという事をトルクメニスタン戦に比較して格段に意識できているように見えました。
✩6北川・南野の2枚でのプレッシングでビルドアップを封じた
日本のW杯の時からのストロングポイントである前線でのプレッシングは新世代でもしっかりと行えるという事がわかりやすいシーンを選んでみました。
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パスできない箇所を「×」で記載してみましたが、全てのシーンで「×」マークが2個以上ありますね。
2人で常に2か所以上のパスコースを消しながらボールホルダーに寄せて行っているので、合計3人以上を相手に困らせており、最終的にGKにロングボールを蹴らせるというところまでできています。
ここまで蹴るぞ蹴るぞの姿勢で蹴る時はバックラインを上げる事も容易ですし、前線で数的不利なので、中盤~バックラインでの数的優位になりやすいので、非常に良い守備だと思いました。
✩7両CBの鎖が切れてしまっていた
これはこの試合で最も気になった守備の課題です。
1つ目のピンチシーンです。
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吉田の裏(縦へのパス)が日本にとって最も嫌なコースで、薄黄色の部分では数的優位です。
富安は裏へのボールを手厚めにケアし、FWが後ろ向きのまま足元へのボールを出させる事で、プレスバックしているボランチ陣とのはさみ撃ちができるシチュエーションですが、簡単に裏に抜けられてしまい、GKとの1対1をさせてしまいます。
ここでは権田の絶妙な飛び出しで、ファウルにならない距離感でのコース切りで外にドリブルさせてシュートを外させる事に成功し難を逃れました。
もう1つのシーンを紹介します。
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富安が前を狙っているFWについてスプリントで下がっているのに対して、吉田はゆっくりと下がっています。
それによってシーン3の薄黄色のギャップが出来てしまっています。
ここでは柴崎がドリブルしているボールホルダーからカットしましたが、もし赤矢印の動き(通称プルアウェイ)をFWがして、富安と吉田の間を狙ってきたら危なかったです。
森保監督的に今回の2人のコンビは日本のベストだと考えているようですので、さらに2人の距離感というものを改善し強固にして欲しいと思います。
✩8長友・原口のポジショニングと狙うべき所が悪かった
これは前回の前半と全く同じ課題で、なぜまた起こるのかちょっとよくわからないというような事をLeoさん・戸田さんがおっしゃっています。
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シーン1:吉田からサイドに開いた長友へ早いパスが入ります。これは非常に良いパススピードとコースです。
シーン2:原口「俺のところボール来なかったか」
シーン3:長友「薄黄色のところに原口いたら、裏へのボールで13番を吊りだせるから、北川のところで1対1を作れるのにな」
なんで原口は長友のナナメ後ろでフォローしているのでしょう?薄黄色のところからニアゾーンを狙って縦方向にランニングする事でトルクメニスタン戦は良くなったのに。。次のシーンです。
オマーンの4人の丁度真ん中(審判がいるところあたり)に立って吉田から間パスをもらうと、13番が寄せてくれば、北川のところで1対1になり、11が寄せてくれば長友がフリーになり、チャンスになるシーンです。
原口は下がり過ぎ(ボール欲しがり過ぎ)なのかなと思ってしまいます。さらに同じようなシーンです。
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遠藤がうまく間パスを通して原口は前を向けていますが、23番と戦っています。13番と戦ってほしいわけですよね。
4人の中間である薄黄色の四角形の中心に立てば、13が寄ってくる確率は高いですし、原口のいる位置まで下がっても下がらなくてもパス成功率は変わらないですよね。。
私の考え方が間違っているのか森保監督もしくは戦術指導スタッフ等は全然伝えないのでしょうか・・・?
✩9堂安の最も活きる形が見られた得点シーンと左WGについて
今回の得点のきっかけとなったPK獲得の手前のシーンの堂安の1タッチプレーは見事でしたね。ここでは堂安が最も活きる形について考えます。
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原口が中にカットインしている時に、シーン1の黒矢印で記載したような奥から手前に切り返してバイタリエリアで前向きでフリーになれるポジションを取りに行っています。
そこでボールを引き出し1タッチで南野に出して1対1シュートまでつながりました。
堂安は中島がいる方が活躍できるという事を戸田さん・岩政さんの二人がコメントしていました。実際に原口が中島みたいなプレーをした際の堂安は非常に良い動きをして得点シーンの演出をしました。
そして、アジアカップでの堂安は、去年のキリンチャレンジカップ程の活躍をしていない印象です。キリンチャレンジカップよりボールが来ているにも関わらずです。
堂安はドリブルでキープや持ち運ぶ事もできてしまうのですが、一番の魅力はフリーになる動きとそこからの1タッチプレーなのかなと思いました。
✩10CBからどうやってビルドアップするのか、後方での数的優位の意味
日本はよくボランチのアンカー落ちや、SB落ちで後ろを3枚にして、相手2トップのプレッシングを回避する事を行います。
サイドの選手が1stディフェンスのラインを超える事が狙いとしてあるはずなんですが、CB陣はそこをちゃんとわかっていないように感じました。
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遠藤がアンカー落ちして数的優位を後方で数的優位を作っているのに、そのまま前に持ち運び、1stラインをパスで超える富安のシーンです。
遠藤を経由して1stディフェンスラインを引き寄せ、吉田の前の薄黄色のスペースで吉田がボールを持てるように相手を動かして、2ndディフェンスラインを引き付けて別の空いたスペースを作っていくのが基本です。
今回の試合では引きつけがなく、すぐ前(数的不利な場所)にパスを出してしまうシーンが散見されました。1stラインはドリブルで超えるべきだと思います。もう1つ紹介します。
ここから富安は精度の低いロングを蹴ってボールを相手に渡してしまいます。
写真に写っているエリアで後方は数的優位、中盤~前方数的不利なので、普通にやればロングが通る確率、セカンドボールを拾える確率は低いですね。
相手CBにギャップがあれば狙ってもいいと思いますが、このシーンではCBのラインが揃っていて距離感も近く、まず無理そうでした。
森保監督がCBからビルドアップして攻撃を組み立てる事をプランとしているのであれば、こういった相手のプレッシング回避しつつ1stラインをひきつける事をCBがもっと行えなければなりません。
オマーン戦の北川のしていた事と大迫不在の時にどうするべきか
今回の試合では北川では大迫の代役は厳しいという論調を多く見ました。数字面では2試合で0ゴールですし、ボールに絡んでいるシーンが極端に少ないです。
実際に北川はどういう事を行っていたのか、プレー集&解説を以下の動画でまとめておりますので、そちらで詳しく目で見て北川の評価を確認する事をおすすめします。
私含めて素人がオフザボールの動きを評価するのはとても難しく、北川がどんな動きをしていたのかというのがよくわかると思いますし、勉強になると思います。
私個人として、北川が大迫の代役が務まるかという疑問に対しては「同じ役割は不可能である」と思っています。
しかし、プレー集での解説にもあるように、チームとして北川の動きだしを見てあげて、もっとボールを出してあげたらチャンスを作り出し、ボールにからむようになると思っています。
ですので、大迫の代わりはチームで戦い方を変えるべきであると思っています。
大迫が出場しているからくさびを入れる戦い方をする、出ていない時はよりスペースを見るようにして、ミドル~ロングパスを増やす等といった、武器を変えるような戦いが出来れば日本はもっと強くなるでしょう。
日本の課題・伸びしろまとめ
- ロングボール戦術に対する中盤のプレスバック・セカンドボール対策の不足
- CB間の距離・高さの関係性の悪さ
- 原口のポジショニング
- 堂安の活かし方
- CBからのビルドアップ
- 大迫不在時の戦い方
次の試合以降の見所
次の試合では恐らくスタメン組を休ませる選択をすると思いますので、岩政さんが指摘しているスタメン・サブ組のメンタルが分かれてしまっていないかが気になります。
また、原口のポジショニングは課題ですが、改善されるとそもそも能力の高い選手ですのですぐに伸びしろとなる要素ですので、引き続き注目です。
別の選手が出場した際にユニットでの連携が取れているかという点で、2CBやダブルボランチの距離感等も見ていきたいですね。
とりあえず、予選リーグ突破が決まり、休ませる事ができるのはアドバンテージです。
次のウズベキスタン戦は1/17(木)22:30キックオフですので、さらに良くなっている事を期待してみてみましょう!