サッカー日本代表アジアカップカタール戦課題まとめ!ビジュアル付き解説も!

2019アジアカップの決勝戦が先日UAEのシェイク・ザイード・スタジアムで行われました。

日本は準決勝でアジア最強のイランを破り、カタールは開催国のUAEを4-0で破りと両者勢いのある状態で決勝の舞台に立ちました。

結果は3-1で日本の負けでした。

準優勝で喜んでいいのか?なぜ勝てなかったのか?カタールは強かったのか?

戸田さん・岩政さん・Leoさんの分析を見た上で、試合を見返して見えた事を解説していきます。

中島や香川がいれば・・・という毎度起こる議論等ではなく、私は今回の敗戦の要因は完全に監督にあると思っています。

試合内容を分析し、監督の評価や次につながる議論へとマインドを持っていきましょう!

日本とカタールの攻守のフォーメーションについて

お互いのAプラン(スタート時に用意していたプラン)のフォーメーションは以下でした。

日本はいつも通りの4-2-3-1攻撃/4-4-2守備、カタールも過去の試合で見せていた3-1-4-2攻撃/5-3-2守備でした。

※カタールの攻撃フォーメーションは3-5-2の状態等もあり、中盤とアフィフが流動的でしたので、目安と考えて下さい。説明の都合上3-1-4-2が最もわかりやすいと思いました。

カタールは途中で5-4-1守備も併用してきましたが元の5-3-2に戻したりもしていました。

日本対カタールの最高画質ハイライト動画!

日本とカタールの戦術とは?実際に起こっていた現象と課題も!

カタールの守備特徴と実際の事象

カタールの5-3-2守備の特徴は以下の4点です。

  • 5枚のデイフェンスライン後ろへ来たボールへのカバーリング
  • 5枚のデイフェンスライン手前に来たボールに対するチャレンジのパワー
  • 3枚の横スライドが大変
  • 2枚はアンカーケアによる外回りパス誘導

5枚のデイフェンスライン後ろへ来たボールへのカバーリング

ディフェンスラインに多くの人がいて、1人抜かれても隣の人がすぐにカバーするよう意識づけされていました。

南野から大迫へのパスに1ドリブルしてサルマンは抜き去りましたが、まだフーヒとハッサンがいて、ハッサンに体を入れられてしまいました。

ここで注目なのが、外側のハッサンがしっかり内側をカバーする意識がある点です。後半7分50秒ごろの柴崎→南野への鋭い縦パスからのチャンスシーンではコレイアが斜め後ろに戻ってきて内側をカバーしてクリアしています。

つまり5枚全員がカバーする意識を強く植え付けられているとてもよく訓練されたディフェンスラインと言えます。

5枚のディフェンスライン手前に来たボールに対するチャレンジのパワー

前項で解説した抜かれた後にもカバーリングがいるおかげで、ディフェンスライン手前に来たボールに大胆にチャレンジする事ができます。

実際のシーンを紹介します。

原口から大迫へゴロパスを入れたシーンですが、パスが転がっている間にアルラウィがかなりの勢いでパスカット狙いのスプリントをしてきて、カットされてしまいます。もう1シーン紹介します。

逆サイドの場合も写真の様に堂安から大迫へパスを出したボールが転がっている間にフーヒがかなりの勢いでスプリントしてカットしています。

堂安のパスがそれた事もありますが、カタールディフェンスは日本の大きな武器である大迫のディフェンスライン手前でのポストプレーを激しくカットしにいく狙いを明確に持っていました。(南野・堂安・原口に対しても手前で受けようとする人には激しくいってました)

この5枚のカバーとチャレンジの関係が、個で上回る日本対策として組まれた守り方でした。

3枚の横スライドが大変

2ライン目は3枚なので、予測力が高く、ポジショニング修正をマメに行うマディボをアンカーに、左右のハティムとアルハイドスはある程度攻めがって来たら長友・酒井を見るという仕組みになっていました。

サッカーコートの横幅約68mに対して守る人数と難易度の関係はおおよそ以下の様になっています。

人数 難易度
かなり無理がある
がんばらないとスライドが間に合わない場合も
かなり余裕

今回のカタールは2ライン目は3枚で守っていたので、かなり無理があります。

実際のシーンを見てみましょう。

シーン1で長友がボールを持つとハティムが寄せてきます。

シーン2で柴崎が富安ー酒井間に下りる動きをするとアルハイドスがついてきます。ここで逆サイドにボールを蹴りそうな雰囲気を感じカタール中盤は右サイドへ横スライドをしていっています。

シーン3で吉田が柴崎を飛び越えて酒井へ浮き球を蹴ります。アルハイドスは柴崎と酒井両方を気にしないといけませんが、柴崎の方についていった為、シーン4で酒井の前に広大な薄黄色のスペースがあります。

実際のシーンではキックミスになりましたが、柴崎のアルハイドスを吊る動きとサイドチェンジによって、カタールの3枚の守備ラインを酒井がフリーでのドリブルで超えられる事がわかりました。

もし通っていたら、この後5枚の守備に対して、ドリブルで向かっていく事で酒井・堂安どちらにつくのかという問題を生じさせてDF陣にギャップを作り出す事ができていました。

カタールの中盤3枚でサイドチェンジとディフェンスラインに下りるボランチの両方を見るのは不可能なタスクであり、そこがこの中盤の弱点(攻めどころ)でした。

事前にわかっていた弱点ですが、こういった攻めはほとんど見られませんでした。

2枚はアンカーケアによる外回りパス誘導

カタールのアリとアフィフのFW2人は柴崎・塩谷のアンカーへのパスを消す事で、中盤を経由したサイドチェンジをさせず、以下の図のような外回りでボールが動くように配置していました。

外周りブロック

実際のシーンを見てみましょう。

ハティムが富安まで飛び出してきてはいますが、基本FWのアリとアフィフが柴崎・塩谷へのパスを出させないようにして、外回りパスでサイドチェンジさせられています

これは前述した中盤3枚のラインの横スライドが弱点で、ボランチを経由した直線に近いサイドチェンジをされると簡単に崩されるので、外回り=大回りさせる事でそれを緩和させるようにデザインされています。

つまり意表をついて中盤を経由した素早いパスでのサイドチェンジやロングボールでのサイドチェンジをカタールは嫌がっていて、そこが狙いどころでした。

決勝より前から事前にわかっていた事ですが、実際の試合では全く見られませんでした。

カタールの攻撃特徴と実際の事象

カタールの3-1-4-2攻撃の特徴は後ろからビルドアップでつないで、組織的な攻撃をしてくるチームという点でした。

そのビルドアップ特徴を解説します。

カタールのビルドアップ方法

日本の大迫・南野のプレッシングのレベルはかなり高いです。カタールはそれを警戒し、数的優位をつくり、グループで対抗するビルドアップを構築しました。このかみ合わせが非常にマズく、この試合の最大の敗因と言って良いと思います。

まず大迫・南野で3CBを追いかけながらアンカーであるマディボまでも消そうとすると4対2になりますので、いかに守備プレスが上手でも物理的に無理です。

マディボに出させないように大迫・南野のどちらかがマークした場合、今度は中盤で数的優位ができます。

実際のシーンを紹介します。
ビルドアップ

誰が誰のマークかわかりにくいので、図にしました。

ビルドアップ図1

当初中盤の3枚はマークにつけていました。(アルハイドスー柴崎・ハティムー塩谷・マティボー南野)

ところがハティムが外に流れるのに塩谷がついていき、空いたスペースに柴崎・塩谷にとって死角である後ろから急にアフィフが出てきてボールを受けます。

アリも吉田と富安の中間ぐらいのどちらのマークなのか曖昧にさせる場所に立っていますので、下りたアフィフにどちらががついていくのか急に判断できません。

この図も以下のようなエリアで考えてみると中盤でのカタール数的優位(日本5:カタール6)になります。

ビルドアップ図2

つまりバックラインで数的優位(3:2)をつくって前進し、中盤でも数的優位(6:5)を作ってパスを通して前進できる仕組みになっています。

この時日本のバックラインでは4:1というアンバランスすぎる数的優位になっています。

かみ合わせが悪すぎてバイタルエリア手前まであっさりとボールを運ばれた前半の原因がこのバランスでした。

しかもどこかでミスした時の為のリスク回避として、クリア時はハッサン(186cm)対堂安(172cm)になるように決め事とされていました。

このカタールの5-3-2は元々予選リーグで何度か使用していたので、これに対応するかみ合わせが悪い事は事前に想定できていました。

戸田さんや岩政さんといった解説されている方々のコメントでも森保監督がどう対策を準備してくるか?というのが試合前の注目点でした。

試合が始まってみると、既知の5バックにうまくいなされ、2失点した後の前半35分にやっと大迫を呼んで南野にマディボマンマーク、原口・堂安を一列前にあげる4枚プレスで4枚を見る形に修正しました。

試合は時間的にも内容的にもとてもしんどくなりました。

なぜAプランである既知のフォーメーションの対策を試合中に行ったのでしょうか?

日本の守備特徴と実際の事象

日本の4-4-2守備の特徴は以下の点です。

  • 3対2の数的不利プレスでビルドアップ封じを狙い、ハマらないので常に後手後手に
  • 修正する前に2失点してしまった
  • ビルドアップ封じの枚数調整後は4対4の状況に
  • スカウティングでわかりそうなハティムの左足への警戒が薄かった(左右均等)

ビルドアップ封じのプレス修正後どうなったのか?

カタールのビルドアップとのかみ合わせで紹介した通り、大迫・南野のプレスかわされ、2失点してから修正した形がこちらです。

ビルドアップ封じ修正後

数的にははまっていて、以下の写真のシーンのようにそれなりにカタールを自由にさせなくなりました。

ビルドアップ封じ修正後

しかし、付け焼刃的に修正しただけなので、原口や堂安の連動(いつ・どこでスプリントを仕掛けるのか)がうまく行かず、マークを埋め切れていない時に仕掛けてパスを出されてしまう事もありました。

スカウティングでわかりそうなハティムの左足への警戒が薄かった(左右均等)

Leoさん・戸田さんから指摘されていたのですが、2点目を取ったハティムは韓国戦で同様のミドルを左足で決めているので、左足には特に注意して寄せろという事前情報があっても良さそうです。

しかし実際には失点シーンでは寄せられず、後半33分のシーンで実質もう1点につながってしまいます。

左足警戒

ボールホルダーは左足ミドル警戒のハティム、マークは柴崎。

右足を振りかぶったキックフェイントに大きくひっかかり、左足で打たれてコーナーに。

※ちなみに柴崎はよくシュート触ったと思うし、よく戻ったとも思います。

そのコーナーでハンドのVARからのPKで試合終了という流れでした。

「ハティム左足ミドル警戒」って選手の頭に落とし込まれていたのでしょうか?

韓国戦でも取って、日本戦でもとって、最後の息の根を止めたプレーもハティム左足ミドルです。

日本のカタールに対する守備の事前準備はビルドアップ封じのプレス以外にも粗が見えてしまいます。

日本の攻撃特徴と実際の事象

日本の4-2-3-1攻撃の特徴は以下の点です。

  • 5バック崩しの方法が予選リーグから改善されなかった
  • 5バックに有効な崩し方・狙うべきエリア・セオリーが選手間で統一されていなかった
  • CKをたくさん蹴ったけど点に結び付けられなかった
  • 後半からハッサンのサイドを狙う傾向があった
  • 武藤交代起用で5バックに脅威を与えた
  • SB→SHの縦パスを狙う意図があった

5バック崩しの方法が予選リーグから改善されなかった

5バックに対する攻め方はトルクメニスタン戦やベトナム戦課題まとめで書いている内容はトーナメントを通して改善がなされませんでした。

  • 5枚のラインにサイドチェンジは効果がない
  • ディフェンスライン手前へのパスが多すぎる
  • 原口と長友の立ち方と狙いどころ(深い位置・ニアゾーンを狙う)

5バックに有効な崩し方・狙うべきエリア・セオリーが選手間で統一されていなかった

今回であれば前項で挙げたとおり、2ライン目が3枚だったのでサイドチェンジを活用すべきでした。

見ていて、酒井が最も相手のディフェンスラインに選択を迫るようなドリブルを仕掛けていて、技術的にではなく、戦略的に困らせていたように思います。

CKをたくさん蹴ったけど点に結び付けられなかった

富安が得点を挙げた経験があるので、富安や吉田に対して中央で勝負させたが、かなりフーヒに跳ね返されていました。

そして吉田との交錯で交代した後に得たコーナーキックでは、ニアに走り込むような形に変えていました。

中央でフーヒにあまりにも跳ね返されるので、ニアに変えようと思ったのだとしたら、フーヒが退場したのにニアに変えたのはなぜなのかわかりませんでした。

またショートコーナーにもカタールは1人置いてしっかりと対策をしており、チームとして、決め事がある所を感じました。

後半からハッサンのサイドを狙う傾向があった

大迫がハッサンサイドに流れるプレーが2本続いただけでなく、繰り返し堂安・酒井サイドで勝負するシーンが多かったので、監督からの指示があったと予想されます。

武藤交代起用で5バックに脅威を与えた

原口に交代で武藤を起用して、相手の5バックに対して、5~6トップ状態を作るような形で押し込み、1得点にはつながった。

6トップ

後半に入り、カタール中盤のハティム・アルハイドスには疲れが見え、戻りの遅れなどで6トップ状態での攻撃になっていました。

SB→SHの縦パスを狙う意図があった

前半3分~4分で長友~原口へのアバウトな縦パスが2本連続で出されたので、監督からの指示であった可能性があります。

この辺はなんとも言えませんが、5バックの弱点である深い位置を狙う方法だったのかもしれません。

日本対カタールの敗因に関するおかしなコメント

ここまで説明した内容から、個人的に今回の試合の敗因は既知のカタールAプランへの事前準備のなさであるのに、「修正が遅れた」や「予想が外れた」というコメントが散見されるのはなぜでしょうか。

修正というものはこちらのAプラン対策に対して相手が変えた後のBプランに対して行うもの、もしくは初めて見るAプランに対して行うものだと思います。

「予想が外れた」というのも、戸田さんの裏解説や岩政さんのスカサカレビューではことごとく相手は5バック濃厚と言われている中で、森保ジャパンコーチングチームだけがなぜ5バックを予想できなかったのだろう?

最後に

個の力で勝る相手に準備と戦略で敗れた日本代表の姿は余りにも悲しかったです。

ブラジル・スペイン・フランスといった個の力で劣る相手を打ち倒す姿を夢見ながら日本代表を応援している人はきっと私だけではないと思うので。

もっと日本サッカーを強くする為に、視聴者に勉強になる情報を伝えるべく、知識関連の情報をさらに発信していこうと思いました!

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です