サッカーアジアカップが開幕し、初戦である日本代表対トルクメニスタン戦が先日行われました。
結果は3-2で辛くも勝利という事で、その内容はどうだったのかを有識者のコメント分析を基にビジュアル化して、課題をまとめていこうと思います。
特に今回は前半と後半で全く内容の異なる試合でしたので、森保監督の采配の結果が如実に出たので、そのあたりも分析していきますね!
INDEX
- 課題と試合中に起こっていた現象
- 日本対トルクメニスタンの最高画質ハイライト動画!
- 日本とトルクメニスタンの攻守のフォーメーションについて
- 有識者コメントの分析・感想とビジュアル解説
- ✩1バイタルエリアへの縦パス守備対策
- ✩2攻められている際に逆サイドのWGが中寄りにポジション(柴崎・富安の裏)を取り、カウンターの起点になっていた
- ✩3格下相手の緩みからくる、攻撃時のポジションバランスの悪さが2失点目につながった
- ✩4前半はサイドの攻防でのWG/SBのポジショニングが良くなかった。狙うべき場所も良くなかった
- ✩5前半は中央への縦パス一辺倒だった
- ✩6後半から原口が外に開いて幅を取り、長友にハーフスペース後ろでサポートもしくはニアゾーンを狙う動きに
- ✩7トルクメニスタンMFの4枚のスライドが追い付けない程のスピードでサイドチェンジして攻めた
- ✩8選手の特徴、最も活躍できる立ち位置でプレーさせる人の配置の考え方
- 民放での解説コメントについて
- 日本の課題まとめ
- 次の試合以降の見所
課題と試合中に起こっていた現象
今回もスカサカ岩政さん・清水さん、戸田さん、LEO the footballさんのコメントを参照し、課題とビジュアル理解をしていこうと思います。
トルクメニスタンの守備について
バイタルへの縦パス守備を対策として、日本のボランチに激しくいかず、2ラインの間へのボールに厳しくいくようにしていた。→☆1
トルクメニスタンの攻撃について
日本の守備について
日本の攻撃について
日本対トルクメニスタンの最高画質ハイライト動画!
日本とトルクメニスタンの攻守のフォーメーションについて
お互いのフォーメーションは以下の形でした。
- 日本(攻)→トルク(守)
- 日本(守)←トルク(攻)
日本はいつもの4-2-3-1,4-4-2でのアプローチ、トルクメニスタンは攻守両方5-4-1(攻撃時や後半終了間際のアグレッシブ守備時は3-4-3とも言えます)
あえてトルクメニスタンの攻撃時フォーメーションを両チームが重なった状態の図にしました。前半は実際によくこういう感じになっていて、カウンターがうまくいきやすい状態を作られていました。
有識者コメントの分析・感想とビジュアル解説
✩1バイタルエリアへの縦パス守備対策
試合への人の配置の仕方から、トルクメニスタンが分析して日本対策してきた内容はたぶん以下のような内容だと推測できます。
- 日本人はロングレンジのシュート・パスがあまり得意ではない選手が多い
- 後方から前4枚(FW・OMF・LWG・RWG)への縦パスで一気にスピードをあげる攻撃が森保ジャパンの特徴で、最もゴールにつながる事が多いパターン
- サイドからのクロスはそこまで怖くない
本来のトルクメニスタンのフォーメーションは別のフォーメーション(4-2-3-1?)で戦う事が多いチームであるのに、今回は5-4-1という明らかに日本対策のフォーメーションを組んできたので、上記のような分析が予想できるのです。
どういうことか説明します。
前半によく見られた日本のビルドアップ→ボールロスト→カウンターの人の流れには1パターンな法則がありました。
ボールロストする直前のトルクメニスタンの2ndラインを見てみましょう。
- 1
- 2
- 3
トルクメニスタンのMFの2ndライン➀~④はWボランチあたりのボールホルダーに全然寄せないのです。
そうする事で、DFのラインである1stラインとの距離をかなり狭くしています。
そして、日本のボランチから前線への縦パスを通す隙間は開いていますので、柴崎や富安はくさびパスを入れます。
トルクメニスタンのディフェンスはここに全パワーを注ぎ、囲んですぐさまカットしてしまいます。
海外のチーム相手だと、ここまでボランチをフリーにすると、裏へのパスや、ミドルシュートを打ちますが、日本だとあまりそういうプレーを選びません。※現に日本はほとんどありませんでした。
写真では3シーンピックアップしましたが、他にも同じようなシーンは多数ありました。
サイドからクロスあげてもらってもいいし、ミドル打ってもらってもいいし、得意な縦パスを入れたらつぶしますというような見事な日本対策ですね。
そしてトルクメニスタンはこの縦パスつぶしからのカウンターもしっかりと考えられていました(✩2へ)。
✩2攻められている際に逆サイドのWGが中寄りにポジション(柴崎・富安の裏)を取り、カウンターの起点になっていた
まずトルクメニスタンの8,9番の両WGは長友と酒井が上がった際にちゃんとついてきますので、攻め残りをしているわけではなく、第一優先は守備の意識を持っています。
そしてボールが逆サイドにある場合に中気味にポジションを取りつつ自分が担当するSBはきちんと見ています。
ボールサイドに寄ってボールサイドでの数的有利を作り、ボールカットすると、逆サイドのWGがボランチ裏を狙うので、そこに向けて蹴りこみます。(以下の図参照)
- 守備時
- ボール奪取時
実際のシーンでは、1失点目のシーンと、前半36分のカウンターのシーンの画像を載せます。
同じような形で、日本の右サイドの組み立てにボランチが広がって参加し、堂安が仕掛けてボールロストした所を右サイドのミンガゾフがボランチ裏に抜け出し、そこにパスが出て、一気にカウンターになっています。
全く同じ形が前半だけで2回も起こっているので、意図的に狙っていると言えます。
攻撃に気を取られすぎてボランチのポジションバランスがおかしくなっている事に失点してからも日本は気付いていないのだと思います。
Wボランチの片方がサイドに広がっている時は、もう片方のボランチがこのCB前・ボランチ裏(バイタルエリア)をカバーするか、SBを絞らせるなどのコーチングでスペースを埋めに行かなければなりません。
後半になると長友がミンガゾフを見ながらスペースを埋めていて、綺麗なカウンターをさせていないです。
これからのアジアカップの戦い~W杯まで、どのボランチの組み合わせでも、日本のバイタルエリアを簡単に使わせないようにカバーする意識を持つ事が現状の課題の1つと言えます。
✩3格下相手の緩みからくる、攻撃時のポジションバランスの悪さが2失点目につながった
2失点目につながる北川のボールロストからのパス1本のプレーですが、以下の写真がボールロストする直前のポジショニングです。
北川のボールロストが原因の1つではありますが、ディフェンス陣のポジションバランスが楽観的であると戸田さんの指摘にありました。
「前に運べるだろう」という格下相手のだろう意識がこのようなポジショニングを作り出していると思います。
具体的にはダブルボランチの間空き過ぎ、吉田開き過ぎ等色々あると思いますが個人的には、この写真を見る限り、槙野が中央にしぼりつつラインを上げて吉田と揃える事をサボったように映ります。
アジアカップではこれが命取りになりそうですので、ディフェンス陣は特に気を抜かず、しっかりとポジションを取る事を課題として意識して欲しいです。
✩4前半はサイドの攻防でのWG/SBのポジショニングが良くなかった。狙うべき場所も良くなかった
前半の日本の攻撃がうまくいかなかった理由は✩4の縦パス一辺倒だった事と以下のシーンのようにハーフスペースの奥側であるニアゾーンを狙うランニングを意図的に行えていなかった点です。
堂安よりも原口サイドでは顕著で、ここが改善された事で後半の躍進につながりました。
- 1
- 2
もしこのニアゾーンへランニングすると、誰がマークするのかという問題をディフェンスラインに引き起こし、結果ラインは乱れ、オフサイエリアがほぼなくなり、手前のスペースに走りこめるスペースができます。(下図参照)
一気にチャンスのスペースがたくさんできますね!
これができていなかったのが前半の苦戦で、やるようになって後半の成功特に2点目につながるプレーが生まれました。
✩5前半は中央への縦パス一辺倒だった
日本は前半特に柴崎や吉田から前線への縦パスを多く入れ、そしてその先でカットされ続けていました。
✩1で説明した通り、前半はこの試合までなまじうまく行っているせいもあって、縦パスを山ほど入れていました。
3分のシーンではサイドがフリーでも縦パスを入れています。
サイドから相手のラインを乱し、ラインのギャップを作り、スペースを作り出すという事を意識すべきでした。

原口がフリーなのに中(縦)を狙う柴崎
✩6後半から原口が外に開いて幅を取り、長友にハーフスペース後ろでサポートもしくはニアゾーンを狙う動きに
後半から日本の攻撃に目に見えてわかるほどの2つの大きな変化がありました。
1つは中に入りがちだった原口が、がっつり大外に開いて待つポジションを取るようになった事です。
もう1つは✩7で解説する逆サイドから一気にサイドチェンジを行う横スライドの間に合わないスピードでの攻めです。
大外に開いた原口のプレーは見事に1点目に直結しました。
ここからドリブルし、トルクメニスタンのSBとWGの間からパスを大迫に入れて大迫の見事なトラップ&切換えしシュートにつながりました。
この時長友は、原口がドリブルでひっかかった時の為に後ろでサポートしています。
そして大外原口、ニアゾーンに走りこむ長友が2点目を作り出します。
✩7トルクメニスタンMFの4枚のスライドが追い付けない程のスピードでサイドチェンジして攻めた
前半はほぼ見られなくて、後半に目に見えて起こっていたので、ハーフタイムでの修正指示があったとみて良いでしょう。
ロングでサイドチェンジしたシーン例(いずれもチャンスになっています)
次の3枚は中盤を経由しつつ、素早いパスでサイドチェンジし、これもチャンスにつながりました。
- 1
- 2
- 3
そして、日本の2点目は✩6、✩7の両方の要素が合わさった形で、以下の写真のサイドチェンジから始まります。
吉田のサイドチェンジ→大外原口ヘディング折り返し→ニアゾーン長友クロス→中央大迫のシュートという流れでした。
✩6、7のように後半から明らかに変わったので、監督の指示があったと思いますし、見事にそれが得点につながったので、こういう試合でこそ森保監督の評価を行うべきだと思います。
✩8選手の特徴、最も活躍できる立ち位置でプレーさせる人の配置の考え方
1得点目と前半の中でのプレーを見ると、原口は中に切り込んでいくより、大外でドリブルする事で輝くプレーヤーだと戸田さんは指摘していて、私もそう感じました。
単純にドリブラーというだけでなく、もっと細分化すると、原口は直線的で中~長距離が走れるドリブルが得意な選手だと思いますので、大外の広い場所で輝けます。
一方乾や中島・堂安は狭い場所で緩急で抜いていく事が得意なので、中へのカットインでファウルをもらったり、複数のマーカーをひきつけてくれたりするドリブルが得意です。※乾・中島は大外も多少できる気がします。
一方長友や酒井はカットインは少し苦手で、大外で輝きます。
SBとの組み合わせで、大外タイプとカットインタイプを組み合わせると良いですが、今回の試合のように、原口・長友の大外×大外タイプよりは乾×長友のような組み合わせの方がうまくいきやすいので、ロシアW杯はうまくいっていたそうです。
私の考えとしては、原口は運動能力が日本人の中でも高い方だと思うので、カットインでの効果的なドリブル・ポジショニング・逆サイドでのプレーがもっとできるようになれば日本はもっと強くなる、伸びしろ部分を担う選手だと思っています。
守備力・大外での突破力は大きな戦力になるし、右サイドでも起用できるという非常にチームに役に立つ選手になると思っています。
民放での解説コメントについて
戸田さんが実施している裏解説に対して表の解説人のコメントは見ている人にどう届くのか個人的に考えてみました。
松木さんの提言
前半から口酸っぱく「トルクメニスタンが戻る前にサイドから素早く攻めるべき」と言っていました。
✩7で解説した、大きなサイドチェンジによる横スライドが間に合わないような攻めを言っているのか、カウンター的な縦の素早さを言っているのかどちらか判断できません。
もしスライド守備の方を言っているとしたら、意外とちゃんとした事言っているなという印象ですが、おそらく縦のスピードの事を指してそうです。
中山さんの提言
「ダイレクトか1タッチで素早く攻めるべき。リズムが大事」
ダイレクトプレーはいついかなる時も相手は守り切るのが難しい超必殺技みたいなところがありますので、もちろん効かない事はないです。
しかし今回の相手にフォーカスしたアドバイスとしてはあんまり適切でないかなと思ってしまいました。
日本の課題まとめ
- 縦パスが通用しない相手にしっかりとスペースを作り出すポジショニングとランニングを行う
- ボランチの組み合わせに関係なく、バイタルエリアを意識したポジショニングをする
- 格下相手のだろう意識(ミドルゾーンではしっかりと守備のリスクを考える)
また、今回の試合でも改善策が見当たらない、大迫が出られない時どうする問題が過密日程7試合でのアジアカップでも出てくると思います。
次の試合以降の見所
大迫と同じ役割を別の選手に求めるのは技術的に難しいので、2トップを試すのではないかと個人的に思っています。
次の第2戦で突破を決めて、第3戦で何か新しい事を試すのが現実的ですので、武藤や乾をどう起用して大迫以外のFWのパターンを作るのかが見所かなと思います。
次のオマーン戦は1/13(日)22:30キックオフですので楽しみに見ていきましょう。