アジアカップ予選リーグ最終節のウズベキスタン戦が行われました。
既に突破が決まっている状況ですので予想通り、ほぼBチームと言えるスタメンで試合に臨み、先制されつつも逆転で1位突破を決めています。
この試合では、どういった課題があったのかをいつも通りビジュアル付で解説していきます。
INDEX
日本対ウズベキスタンの最高画質ハイライト動画!
課題と試合中に起こっていた現象
今回も戸田さん、スカサカ(岩政さん・清水さん)、Leo thefootballさんのコメントを見てから2度試合を見て分析していきます。
※実際には2.8試合ぐらい見てますが。。
前提として、今回の試合はBチームをメインとしたスタメンで、試合を見る限り森保監督が相手の分析から指示を行った形跡があまりなかったので、Bチームの試合内容と森保監督の指示のなさについてだと思って頂けるとわかりやすいと思います。
ウズベキスタンの守備について
全体的にボールホルダーへのプレスが弱い。CBどころかボランチへのプレッシングも弱い→☆1
ウズベキスタンの攻撃について
ボランチがCB落ちで3バックを形成するビルドアップ。サイドバックは高い位置に来る。→☆2
ボールを奪ったらボールサイドに14ショムロドフが流れる→☆3
日本の守備について
Wボランチは18,22にマンマーク気味にしてバイタルを埋める意識弱かった。→☆5
失点シーンでは2対1というシチュエーションを作れなかった→☆6
乾のビルドアップ対策によって体力消耗&後ろの連動がなかった→☆7
ミドルゾーンで簡単に縦パスを通されていた→☆8
スローインやゴールキック等のセットプレーのポジションバランスが悪かった→☆9
日本の攻撃について
日本とウズベキスタンの攻守のフォーメーションについて
お互いのフォーメーションは以下の形でした。
- 日本(攻)→ウズベキ(守)
- 日本(守)←ウズベキ(攻)
日本はAチーム同様の4-2-3-1攻撃、4-4-2守備でした。
ウズベキスタンは3-4-3攻撃、4-1-4-1攻撃と大分可変のフォーメーションでした。
アンカーの19シュクロフがCBに落ちて3バックを形成してのビルドアップによって乾が走らされ、調子が悪いという評価が多かったと思います。
実際に調子は悪いのでしょうけど、かなり好プレーもしていたと思っていますので、後ほど紹介します。
有識者コメントの分析・感想とビジュアル解説
✩1ボールホルダーへのプレスが弱い
ウズベキスタンはショムロドフ含む前線のプレスはとても弱く、一旦自陣に閉じこもり前に出てこなかったです。
この後、槙野→青山にボールが出てからも、ショムロドフも中盤の選手もプレッシングには徐々にしか来ません。
プレッシングに来ない事で日本の中盤や最終ラインはフリーでボールが持てるので、いつもより狭いところに打ち込むパスが多かったです。
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シーン1でとてもフリーな塩谷から乾に一気に打ち込みますが、少し浮いて難しいボールになり、トラップミスをしてしまってシーン2で囲まれてボールロストする流れでした。
打ち込むなら低くて早くてボールを蹴るべきですし、そもそも佐々木に出すでも、少しドリブルで前に運ぶでも良かったシーンでした。
✩2ボランチがCB落ちで3バックを形成するビルドアップ
アンカーのシュクロフがCBに落ち、SBが高い位置を取って3バックを形成してビルドアップをしてきていました。
この写真でもわかりますが、このビルドアップは✩7にある乾のカバーエリアの話につながってきます。
✩3ボールを奪ったらボールサイドに14ショムロドフが流れる
ウズベキスタンはボールを奪った際に、ショートパスで繋げる場面でもショムロドフへロングで一気に狙う傾向がありました。
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●印の所へショートパスを出す事もできますが、一気にショムロドフへ蹴りこんでいます。
14ショムロドフは毎回ボールがあるサイドの裏へ走りこむという決まり事があったので、蹴る側もわかりやすいのでしょう。
このランニングに失点直前も三浦がやられかけています。
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このボールサイドへのランニングカウンターは事前スカウティングでわからないのでしょうかね?
✩4サイドチェンジを多用し、成功率が高かった
特に後半多かったのですが、これによってスライドがずらされ、ポジションの修正をする必要がありました。
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ボールを持つ乾のマーカーへはスプリントするので✩7にもある理由とあいまって乾の疲弊に直結しました。
✩5Wボランチは18,22にマンマーク気味にしてバイタルを埋める意識弱かった
塩谷が本職CBからかわかりませんが、かなりマンマーク気味で、ゾーンを閉じてコンパクトにするという概念がないように見えました。
バイタルエリアにも関わらずノーマークの人にボールを渡すと前向きで受けられるので、かなり危険なシチュエーションかなと思います。
塩谷が2人見るより、コーチングでそれぞれ捕まえに行った方が良かったように思います。
✩6失点シーンでは2対1というシチュエーションを作れなかった
まずは失点シーンのコマ送りを見てみましょう。
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スローインの後からシーン1が始まりますが、裏への縦パスに槙野がそのままやられ、カバーに行った三浦もショムロドフを止められずにそのままシュートまでいかれ失点してしまいます。
シーン1~3で槙野がシンプルな縦パス1本で置いていかれるほど抜かれてしまっているのがよくわかります。
そして、シーン4でカバーに行った三浦のおへそが自分のゴールを向いていて槙野との間側に隙があるの体の向きになっています。
シーン5で槙野との間を割られ、三浦の背中側に入られ、しっかりとシュートコースを切ることすらできずという形です。
槙野の抜かれ方、三浦の体の向きはそれぞれ1対1の敗因の1つかと思いますが、それだけでなく気になった点がありました。
シーン2~5で槙野は1度もスピードを落とさずに戻っているのにショムロドフに追いつけていないので、三浦がショムロドフを全くスピードダウンさせられていないという事です。
1瞬たりとも2対1というシチュエーションを作れず、1対1を2度行い、それぞれ敗北したという事になるので、2対1を作って勝つ守備をチームとして行えなければ、相手がもっと強敵だった時に対抗策がなくなってしまいます。
✩7乾のビルドアップ対策によって体力消耗&後ろの連動がなかった
前半から何度も見られたシーンです。
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ビルドアップ時に乾が積極的に相手の右CBの選手をにらみ、ボールが出てきたらスプリントでプレッシングをかけていました。
しかしそれに連動して佐々木がSBの6まで出てこないので、簡単に6にパスを出され、そこから組み立てられるシーンが多かったです。
折角乾がスプリントで黒→のプレッシング行っているのに、6が空いていると上記の図になり、結局乾は20と6両方の広大なエリアを守らなければならず、前半からめちゃくちゃ走らされて後半にヘばってしまいました。
以下の図の黒→のようにいわゆる縦スライドができたら乾のスプリントも無駄ではなくなったのに、チームとして動いていなかったです。
戸田さんも監督に言われたわけではなさそうだけれども、相手のビルドアップを見て判断した乾のプレッシングは素晴らしいとおっしゃっていました。チームがついてこなかったのが非常に残念です。
あえて乾に走らせて守備をさせるという作戦もありますが、だとしたらバテるのはわかりきっているので、81分での交代は遅すぎましたし、交代寸前に体力切れのほころびは出てしまっていて、置き去りにされるプレーが3つ程続いていました。
今回の試合の乾の動かし方は、監督の采配として以下3つしかないと思います。
- 前からはめる縦スライドを指示する
- 乾に走って2人分見てもらって、60分ごろには交代させる
- 原口を次の試合で使う為に最後まで乾を交代しない
上記のいづれでもなかったので、森保采配には低い評価をせざるを得ない結果だと思いました。
✩8ミドルゾーンで簡単に縦パスを通されていた
Wボランチの間隔が広く、中を閉める意識が過去で最も低いコンビでした。
シーン2の下側に伊東がいるので、青山が立っている場所は何の意味もないので、もっと上にずれて中を閉めないとだめでしたね。
✩9スローインやゴールキック等のセットプレーのポジションバランスが悪かった
オマーン戦ではスローイン時のポジションバランスは岩瀬健さんに褒められていたのに、今回のウズベキスタン戦ではスローインから失点してしまいました。
何が違うのか比較してみます。
まずはオマーン戦のスローインのポジショニング2カットです。
- オマーン攻撃方向←
- オマーン攻撃方向←
どちらのシーンも裏が空いていないので、●の選手が手前に貰いに来ています。ウズベキスタン戦の失点シーンではどうでしょう?
●の選手が乾の裏へ走り前向きにパスを貰いそこから一気にやられてしまいます。(続きは✩6のシーン1につながっていきます。)
オマーン戦ではスローワーに対して1人と、裏のカバーに1人を配置しています。(原口・遠藤、堂安・遠藤)
ところがウズベキスタン戦では乾しかいません。
声を掛け合うというのがなかったのでしょうが、恐らく乾的には乾がスローワーを見て、●は別の選手がマークするものと考えたのだと思います。
スローワーのマークをする事で、より前の位置に残り、攻めの準備ができるのと、その役割をボランチの選手にさせるのはおかしいからです。
このあたりが即席チームの粗なのかなと感じます。Aチームがこのような事をしないように祈っています。
✩10蹴らなくていいロングボールでボールを失っているシーンが何度もあった
かなり多く目立っていたと思いますが、ウズベキスタンは前からプレスに来ないで、後ろに残っているのにフリーの三浦・室谷・青山がサイドへロングを蹴ってことごとくボールを失うというシーンが散見されました。
このシーンは三浦からですが、なぜここから逆サイドの佐々木に蹴るのでしょうか。
相手を自分のサイドに引きつけて、一気に逆サイドにボールを蹴って横スライドを間に合わなくさせる事がサイドチェンジの狙いだと思います。
このシーンでは数的有利でもないですし、相手が待ち構えている状況で、ミスの起こりやすいロングを蹴ってサイドラインを割ってしまいました。
最悪のミスだと佐々木とウズベキスタンの右SHが入れ替わってのインターセプトからのカウンターまで想定されますので、キックミスというよりサイドチェンジの選択自体がミスなのかなと思います。
これだけでなく、何度も見られましたので、もしかしたら事前情報や監督の指示等があったのかもしれませんが、効果的だと感じたシーンはありませんでした。
✩9の失点になった原因のスローインも右SB落ちした青山から乾へ無駄なロングからボールロストした所からでした。
そして、失点後のキックオフから三浦に渡ったボールを乾にロングで蹴って高すぎて相手にボールを渡したのにはびっくりしました。さっきそれで失点したのになぜでしょうね?
日本の課題・伸びしろまとめ
Bチームでの課題がそのまま日本代表の課題になるわけではありませんので、ここまで説明したもののうち以下が日本代表の課題と考えています。
- セットプレー守備の原則の共有
- 相手のビルドアップを阻止する戦略のなさ
- 相手の攻撃パターンへの守備対策
- 攻撃戦略の柔軟さ(ロングボールの多用は固執するものではなかった)
- 選手交代戦略
- 試合の終わらせ方
スローインの守備やロングボール判断ミスといった何度も起こっている事は、偶然起こったのではなく、必然でありチームとしての課題と見るべきだと思いました。
サウジアラビア戦の見所
次のサウジアラビア戦は今までで一番の強敵ですし、守備の対策と攻撃の組み立ての「準備」が最も顕著に見られ、監督としての評価につながる試合です。
事前に落とし込んだ戦略の見えない前半と、修正のない後半が見られたとしたら監督としての評価は個人的にできないと見て良いと思っていますので、そのあたりも見ていきましょう。