こんにちは!
今回はDAZNで再実況解説RE-LIVEで放送されているチャンピオンズリーグ2017-18シーズンのバルセロナ対ASローマの試合を見て学んだことをビジュアル解説していきたいと思います。
1stレグでバルセロナが4-1と3点差をつけて臨んだ2018/4/10にローマのホーム(スタディオ・オリンピコ)で行われた2ndレグになります。
この試合ではバルセロナの4-4-2に対して、いかにローマがプレッシングして3-0というスコアを手に入れたのかがよくわかる内容になっていました。
昨今よく見られる4-4-2を綺麗に倒し、システム修正なしではバルセロナですらどうにもできなかったのです。
日本も採用する4-4-2の理解が深まると思いますので、是非読んでご意見いただけると幸いです。
INDEX
両チームのフォーメーション
バルセロナボール保持の際、以下のようにバルセロナ4-4-2,ローマ3-3-3-1のようなバランスで配置されていました。

バルセロナボール保持時フォーメーション図
一方ASローマがボール保持の際には以下のようなローマ3-1-4-2、バルセロナ4-4-2で配置されていました。

ローマボール保持フォーメーション図
ここから既にバルセロナ対策がしっかりされている事が表現されており、当時監督だったディフランチェスコは見事な采配だったなと感じました。
この逆転劇は「オリンピコの奇跡」と呼ばれ名勝負の1つとして歴史に名を刻むことになりました。
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後世に語り継がれる名勝負📖
“オリンピコの奇跡”を #DAZNReLIVE で
\第1戦に1-4で敗れたローマ。
絶望的な状況下で彼らはメッシ擁するバルセロナをいかに攻略したのか?新たな実況は、もちろん北川義隆さんでお届け💁♂️
🏆2017-18 UCL準々決勝第2戦
🆚ローマ×バルセロナ
📅4/29(水)⏰19:00 pic.twitter.com/Y4ZdTVWiIQ— DAZN Japan (@DAZN_JPN) April 28, 2020
では戦術の中身について解説していきます。
試合はDAZN契約していれば以下のURLより見られると思います。
ASローマが行ったバルセロナ対策
ローマが準備した対策は大きくは以下の3つになります。
ピケから縦方向に蹴らせて回収する
5バックでバルセロナFW陣の降りる動きに迷わず出ていけるようにする
高さ・強さで徹底的に勝てる勝負にひきずりこむ
1つ1つ解説していきましょう。
ピケから縦方向に蹴らせて回収する
まずはローマの基本プレッシングです。
前半の00:30からのシーンでジェコがかなり特徴的なプレッシングを行っていて、その時点でディフランチェスコの用意した策がわかります。
ピケから一度テアシュテーゲンに戻したシーンです。
ジェコがウンティティをカバーシャドウで消しながらテアシュテーゲンに寄せます。
基本的にジェコもシックもこの試合通してピケ側に誘導していました。
テアシュテーゲンからピケに出した所へナインゴランが寄せます。コラロフはセメドとSロベルト両方を見ている感じです。
デロッシが中央エリアをカバーしていて、ピケからメッシへ縦のロングボールが蹴られてジェズスがヘディングで競り勝ってクリアというシーンです。
ここでのポイントはロングボールが縦方向である事と、ジェズス対メッシのマッチアップです。
縦方向のロングボールは裏に抜ければチャンスになりますが、手前でキープしたい場合は予備動作として死角から不意をついたスタートが必要になります。
メッシはあまりそういう予備動作をするタイプではありませんし、単純なエアバトルの強さに特徴を持つ選手ではありません。
さらにマッチアップとしてジェズス185cm、メッシは170cmと高さでは圧倒的にジェズス有利です。
他にも前半06:14~のシーンではピケにジェコが寄せるパターンもありました。
この試合ではこのシーン以外でも何本もウンティティ側を切って、イニエスタ・Jアルバ以外の全ての選手をマークする事で、ピケ側からストレート方向に蹴らせています。
他にも06:45、14:45、47:00でも同じようなシーンが見られます。
このストレート方向ロングボールを蹴らせるのには2つのバルセロナの持つストロングを消す効果もあります。
小柄ながらロングボールの競り合いに非常に強いスアレス、ショートパスではありえないプレス耐性を持つイニエスタのストロング2名にボールが出されにくいのです。
ちなみに03:04~1本だけピケからスアレスへのクロス方向のロングボールがありましたが、見事にスアレスはボールをキープしてしまいます。
ここ以外ではローマはこういったボールは蹴らせないようにしていました。
ピケサイドのボールターゲットはおおよそ以下の選手達がマッチアップの組み合わせになっています。
バルセロナ | ローマ |
セメド177cm | コラロフ187cm |
Sロベルト178cm | ジェズス185cm |
メッシ170cm | マノラス189cm |
どうマッチアップの組み合わせが入れ替わっても、何も起こらないレベルでローマは空中戦を制していました。
空中戦ではローマが68%(ローマ15回、バルセロナ7回)勝利しています。
スタッツはwhoscoredを参照していますので詳しいスタッツは以下をご確認ください。
スタッツから見るとこの試合の空中戦勝利ランキングは5勝のジェコとジェズスが同率1位でした。
絶対的スタメンでないジェズスを出場させ、ジェズスへ蹴らせてボールを回収したかったディフランチェスコの意図が見事に的中しています。
5バックでバルセロナFW陣の降りる動きに迷わず出ていけるようにする
この試合で何度か少しローマ側が危ない場面になりそうだったシーンは全てライン間に降りてきたバルセロナの選手にショートパスを通されて、ライン突破されたシーンです。
例えば48:30のシーン等です。
こういった時の解決方法は5バックのうちの1名がポジションを離れて前に出ていき、最悪ファウルする勢いでつぶすという方法でした。
イニエスタやメッシが2,3回こういったシーンを作り出しましたが、ことごとくカットもしくはファウルで止められてしまいます。
この試合で最もファウルを受けた選手はイニエスタでした。
高さ・強さで徹底的に勝てる勝負にひきずりこむ
前項のジェズス・コラロフで跳ね返す守備以外にも高さ・強さ勝負へ引き込む狙いは随所に見られました。
ローマ攻撃時は、ジェコ(193cm)・シック(185cm)の2トップがとにかくバルセロナのサイドバックとできるだけ空中戦でマッチアップできるようにポジションをとっていました。
ローマの1点目はシックがウンティティの注意を引き、ジェコがアルバとの走り+競り合いでシュートしてゴールです。
デロッシの見事なフライスルーパスと、ジェコの走るコース取りとコントロールがゴールにつながりました。
バルセロナは弱点である1stライン(スアレス・メッシ)のプレッシャーがかからない点で、どのチーム相手でもアンカーをフリーにさせてしまう傾向があります。
デロッシレベルのパサーをこれだけフリーにさせてしまうとなかなか守るのは難しいので、ローマはバルサのウィークポイントをついて得点できたと言えます。
得点にはつながりませんでしたが、前半35:20~のシーンでも右サイドフロレンツィからのクロスにジェコがセメドに競り勝って惜しいヘディングシュートを放っています。
ここもジェコは意図的にバルサの低いSB勢を狙ってポジションをとっています。
ジェコはそもそもピケ(194cm)相手でも何度も空中戦を勝利(しかも引き分けでなく完全な勝利)していて、2得点目はこのマッチアップでのPK獲得でした。
さらには3点目のコーナーではマノラス(189cm)をマークしている選手はセメド(177cm)です。
高さを徹底的に生かしてローマは3点獲得しましたが、きちんと高さを生かせるビルドアップの仕組みも用意していました。
ASローマのビルドアップパターン
ローマのビルドアップは基本以下の図の流れです。
ストロートマンはイニエスターブスケツ間にポジションを取る事でイニエスタを中央に絞らせます。
ラキティッチは前に出るとブスケツとの間に門が出来て縦パスを通されるので、下がってスペースを減らそうとし、バルセロナの2ndラインはずるずる下がります。
1stレグで先発ではなかったナインゴランが起用された理由はフィジカルバトルができるファイターだからだと思います。
ローマは左肩上がりにファイターをたくさん配置したフォーメーションにデザインされていたわけです。
一方バルセロナのエアバトルは並以下の選手ばかりでしたので、かなり苦しみ最後まで支配されていました。
フロレンツィからアーリークロスをあげられないシーンでも3バックの右を担当しているFファシオのオーバーラップからクロスをあげるシーンも少なくとも2回以上ありました。
通常3バックの選手はあまりオーバーラップしませんが、前半の28:20の時点で現象として現れたので、Fファシオのオーバーラップは事前にディフランチェスコが用意していたと考えられます。
ファシオのオーバーラップの回数がそこまで多くありませんでしたが、オーバーラップの場合はシック(185cm)も中央でクロス要員になれるので、より破壊力が増しました。
もちろん試合開始当初は3点を追いかける状況でしたので、ハイライン&ハイプレッシャーでバルセロナがボールを持つ時間を短くしていました。
どちらボールでもない時間(空中)を多く作り出しそこから素早くボール奪取、素早くアーリークロスは時短という意味でもバルセロナの弱点を突くという意味でも効果的で、見事な采配・準備だったと思います。
バルセロナの敗因は3点のアドバンテージがあった事で、最後の最後までローマの左肩上がりビルドアップを封じる対策、ピケに蹴らせるプレッシング対策を講じなかった事だと思います。
個人的にはイニエスタの左SB落ちや、ピケ・ウンティティ・テアシュテーゲンでジェコ・シックを走らせプレッシングを弱めて適切な中間ポジションを取らせない等同じメンバーでも対策できたのではないかと思いました。
バルセロナ式4-4-2の特徴と弱点まとめ
ここまででバルセロナの4-4-2をローマがどう破ったかを解説してきましたので、まとめておきます。
メッシ・スアレスの2トップは献身的に守備をしないので、アンカーがフリーになりやすい
簡単にバルセロナの1stラインは越えられるので、ゾーン1まで押し込まれてしまう
ゾーン2での守備時に、最終ラインと2ndラインの間が空きがち
ピケからのロングボールはクロス(スアレス)方向をケアすると怖くない
左(イニエスタ)サイドはウンティティからのショートパスを消すと存在が消えてしまう
今はイニエスタ⇔デヨング、ビダル・グリーズマンの加入もあって攻撃時4-3-3、守備時4-4-2になっていて大分変わりました。
ただし誰が監督でもメッシの守備しない負担をどうカバーするのかが1つの問題点になっていますね。